CTMバスターミナルに戻り、手荷物預かり代 ５DHと、タンジェまでの荷物代 １３DHを
支払う。定刻から５分遅れの２３時５０分にカサブランカを出発したハイデッカー・バス
は、途中にテント村のような店での休憩を挟みつつ、タンジェを目指す。

　１０月１５日朝５時２５分、バスはタンジェのフェリー・ターミナル前に到着。下車した所
のすぐ前にあった旅行会社でアルヘシラスへのチケット ２３２ＤＨを購入し、ターミナルビ
ルの２階に上がる。ビルの中には大勢の人がいて、出国手続きのために並んだ列は、
なかなか進まない。５時４０分に並び始めてから１時間後の６時４０分、ようやく私の順番
が回ってきたが、パスポートチェック自体は、それほど時間が掛からなかった。どうしてこ
んなに時間が掛かっていたのだろうか。

　私が乗るのは７時に出港する ＣＯＭＡＲＩＴ社のフェリー。船が出る頃には周囲も明るく
なってきた。船内の両替所で手許に残ったＤＨを両替しようと訪ねると、窓口の男はヤル
気無さそうに「ここでは両替できないからデューティーフリーの方へ行ってくれ。」と言う。
仕方が無いのでデューティーフリーのレジで「両替できないか？」と聞くと、今度は「（さっ
きの）両替所へ行ってくれ。」との答え。残ったＤＨが少なかったので船内で使いきろうか
とも思ったが、船内でＤＨは使えないらしい。まるでカイロ国際空港の時と同じ状況。た
だ、ここでは再度両替所に掛け合うと、窓口の男は ４８．５ＤＨを ４．４ＥＵＲに両替してく
れた。今日は天気も良く穏やかな航海。２時間４５分でスペイン・アルヘシラスに到着し
たが、２時間の時差があるため、時刻は既に１１時４５分だ。

　　　　　　　「タンジェの町並」　　　　　　　「ｼﾞﾌﾞﾗﾙﾀﾙ海峡に昇る太陽。対岸はｽﾍﾟｲﾝ。」

　タンジェでの出国手続きとは違い、アルヘシラスでの入国手続きは至って簡単。日本
人である私のパスポートは一応中身も見ていたが、地元の人たちのパスポートはほとん
どノーチェックのようだ。私の次の目的地は英領・ジブラルタル。ターミナルビル１階にあ
るインフォメーションでジブラルタルへ行くためのバス乗り場をチェック。フェリー乗り場の
門から左斜め前の道をＲＥＮＦＥの駅に向かって５００ｍほど歩くと、通りの左側のビルに
緑色の文字で「TERMINAL BUS」の看板。そこの１階がT.G.COMES社のバスターミナル
になっている。ここからバスに乗ってラ・リネアと言う町まで行けば、ジブラルタルは近い
らしい。平日は７時から２１時半の間、３０分間隔でバスが出る。運賃は１．５５ＥＵＲ。タ
ーミナルにはチケット売り場もあるが、ラ・リネア線は車内で運賃を払うとのことだ。

　ターミナルに入りバスを待つ。しばらくすると緑色のラインが引かれた２両編成のバス
がやって来た。前の扉からバスに乗り込み運賃を払う。この時間帯の乗客は学生が多
い。１２時半にバスは出発。アルヘシラスの町を抜け、しばらくはハイウェイを快走。４０
分ほど走ると、バスはハイウェイを離れ海岸線に出る。前方にはジブラルタルのシンボ
ルとも言える「ターリクの山」が見えてきた。１３時１５分、バスはラ・リネアのバスターミナ
ルに到着だ。

　こじんまりとしたローカルなバスターミナルはのんびりとした雰囲気。コインロッカーが
全て使用中だったので、荷物を待合所のベンチにチェーンロックで固定し、ジブラルタル
へ向かう。ここからジブラルタルまでは、歩いて１０分も掛からない。

　ジブラルタルへの国境ゲートには多くの車が列を作り、歩いて越境する人も多い。ゲー
トではパスポートの提示を求められる程度で、特に入国スタンプも押されない。立ち止ま
ることなくゲートを通過できてしまった。

　ジブラルタルはイギリス領。赤いダブルデッカー・バスも走り、イギリスらしさを醸し出し
ている。ジブラルタル空港を覗いてみても、この日のフライトはブリティッシュ・エアウェイ
ズと、英Monarch Airlines両社のロンドン便のみ。使用通貨もスターリング・ポンドだ。
（ただほとんどの店でユーロも使えるらしい。）また、ここはフリーポート。スペインからや
って来る人々の多くは免税での買物が目当てで、「マルボロ　１カートン　１４．９７ＥＵＲ」
といったように、ユーロ建てで値段を表示している店も見られた。

　このようにジブラルタルは、スペインにポツンと残ったイギリス領。スペインはイギリス
に返還交渉をしているとも聞くが、アフリカ大陸にセウタを持つスペインが言っても説得
力が無い。やはり交通の要所であるジブラルタル海峡に面した拠点を、各国とも手放し
たくはないのだろう。ただ多くのスペイン人が買物のためにココを訪れ、ゲートの前には
長い車の列が出来ている。国境ゲートに掲げられたスペイン・イギリス両国の国旗を見
ていると、返還されること・されないことの、どちらが平和なのかが良く判らなくなってしま
った。

「ｼﾞﾌﾞﾗﾙﾀﾙへの国境ｹﾞｰﾄ。背後にそびえる　　　　「ガチャガチャの値段も当然

　　　　　のは 『ﾍﾗｸﾚｽの柱』 ﾀｰﾘｸの山。」　　　　　　　　　　　　　英ポンド建て。」

　ラ・リネアのバスターミナルに戻り、次の行き先を考える。計画ではここからマドリッドに
戻り、飛行機で南米大陸に向かうのだが、もうこの日はラ・リネアからマドリッドへ行くバ
スは無い。選択肢はアルヘシラスまで戻るか、マラガ/グラナダ行きのバスに乗るか。と
りあえず少しでもマドリッドに近い方ということで、ここからバスでマラガに向かうことにし
た。運賃は８．５４ＥＵＲ。チケット売り場では PORTILLO社のバスということだったが、
実際に来たのはアンドラ-バルセロナ間でも利用した Alsina Graells社の車両。ターミナ
ルでお菓子と飲物を仕込んで、１４時１５分発のバスに乗り込んだ。

　ラ・リネアを出発したバスは、地中海沿岸のリゾートを縫うように走る。青い海に面した
ゴージャスなホテルも多い。バスは基本的にはハイウェイを行くのだが、時折ハイウェイ
を離れ、各都市のバスターミナルに立ち寄って行く。

　バスに乗っている間に、この後のルートを検討することにした。手許のトーマスクック時
刻表によると、陸路を使って今日中にマドリッドに戻るのは難しそうだ。事前の調査で
は、マドリッドから次の目的地　ブエノス・アイレスへの飛行機は、夜出発の便が中心。
今後の事を考えると、出来ることなら今夜の飛行機に乗りたい。そこでマラガに着いたら
空港へ向かい、マドリッドまで飛行機で戻ることにした。

　１６時５０分、バスはマラガのバスターミナルに到着。バスターミナルはＲＥＮＦＥの駅の
すぐ近くにあり、駅舎改装中の駅に掲げられた案内板に従って、地下の近郊線ホームに
下りる。ここから空港までは、近郊線Ｃ１に乗って ４駅・１４分。５時２２分から２２時４２
分の間、４０分間隔で運行されている。運賃は ０．９５ＥＵＲ。

　１７時２２分、カッコいいデザインのＲＥＮＦＥ近郊線に乗車。１７時３６分に到着した
Aeropuerto駅は無人駅で、歩道橋が空港ターミナルに直結している。ターミナルに入る
と、真っ先にイベリア航空（ＩＢ）のチケットカウンターへ。幸い１８時５０分発のマドリッド行
ＩＢ２５５便のチケットを取ることが出来た。運賃は片道で １６９．４５ＥＵＲ。ただ、ついで
に今夜のマドリッド-ブエノスアイレス便について照会したところ、どうやら満席のようだ。

　マラガの空港は、大きくはないものの比較的新しくてキレイ。国際線も飛んでいるた
め、出発ロビーにはデューティーフリーもある。ブルガリ・プールオム ５０ml ３９EUR、

カルバンクライン・ＣＫone １００ml ３５EUR・・・。面白いのは、タバコの値段がＵＥ圏内
向けと、Non UE向けとで値段が違うこと。例えばマルボロBOX １カートンが、Non UE向
け ２０EURに対し、UE向けは ２６．５EUR といった具合。

　出発時刻が近くなり搭乗ゲートに向かう。すると機体の整備が遅れているようで、出発
時刻になっても、まだ機内に乗り込むことができない。１９時になり、ようやく搭乗開始。
私の座席番号は２B。シートサイズは通常のエコノミークラスのものなのだが、座席には
「ビジネスクラス」と書かれたシートカバーが掛けられていた。チケットにはAクラスの文
字。国内線なので、日本で言う「スーパーシート」のようなものなのであろう。それにしても
チケットを発券する時に、一言くらい説明があっても良かろうに。それとも通常のクラス
は既に満席だったのだろうか。たださすがに機内でのサービスは良く、新聞は物凄く沢
山の種類が用意されていたし、僅か１時間のフライトにも関わらず、「チーズ・生ハム・サ
ラミ・クラッカーのオードブル」＋「カタルーニャ産赤ワインのミニボトル」による機内サー
ビスもあった。実際の飛行時間は４５分程度。機内サービスを食べ終えた頃にはベルト
着用サインが点灯し、２０時１５分、飛行機はマドリッド・バラハス空港に着陸した。

　「大きくはないがキレイなマラガ空港」　　　 「ＩＢ225便 機内でｵｰﾄﾞﾌﾞﾙとﾜｲﾝのｻｰﾋﾞｽ」