１０月７日８時半、ホテルをチェックアウトしヴィクトリア駅へ向かう。駅までは歩いて１０
分も掛からない。駅の近くの小学校には、可愛いチェック柄の制服に身を包んだ子供達
が親に連れられて集まってきていた。

　今回ロンドンに来たのはユーロスターに乗ることが目的だったので、今日はすぐに大陸
に戻る予定。当初の計画ではロンドンからPooleまで鉄道で行き、次の目的地であるモ
ン・サン・ミッシェルに近いフランスのサン・マロまでフェリーで渡ろうと考えていた。ところ
がトーマスクック時刻表によると、この航路は「No winter service」との表示。もしPoole
まで行って船が無かったら大変なので、遠回りになるが最もメジャーなドーバー→カレー
航路で大陸に戻ることにした。ロンドンからドーバーまでの運賃は£２０．４。イギリス国
鉄から分割民営化されたConnex社線を利用する。

　キップを購入してホームに向かうと、ちょうど９時４分発の列車の時間。走ってホームに
行くと、ホームの時計はまだ９時４分だったのだが、既に列車は出た後だった。駅では列
車の出発時刻が近づき入線ホームが案内板に表示されるまで、改札の中に入ることは
できない。よって一旦改札の外に出て、３０分後の次の列車を待つこととなった。２年ぶ
りに訪れた駅前の景色を眺めつつ時間を潰し、ようやく次の列車でロンドンを出発だ。

　ここからの列車はいかにも通勤列車といった風情。車内はそれほど混んでいない。途
中の車窓からはカンタベリー大聖堂も見えた。どんよりとした曇り空の下、ロンドンから
約２時間で列車は終点のドーバー・プライオリー駅に到着。駅舎を出て左側に進むと港
までの無料シャトルバス乗り場がある。ちょうどバスが到着して、待ち時間無しでバスに
乗り込む。今度の車窓からはドーバー城を望みながら、イースタン・ドックのフェリー・タ
ーミナルまでは５分程だ。

　ユーレイルパスの利用ガイドによると、フランスのフェリー会社 シーフランス社の運賃
がパスの提示で半額になると書かれていたのだが、シーフランスのカウンターへ行くと、
イギリスのＰ＆Ｏフェリーズ社のカウンターへ行くように指示される。出港時間の関係だ
ろうか？ただこちらの会社利用でも運賃は半額の£８．５。ターミナルビルでしばらく待っ
た後、乗船時間が近づき、徒歩での利用客はターミナルからバスに乗り込む。乗車時に
赤い名刺大のカードを手渡された。乗客は２０人程度。バスは広い港の構内を走り、ゲ
ートのある建物内で停車。ここで乗客は一旦全員下車し、手荷物のＸ線検査を受ける。
全員の検査が終わり再びバスに乗り込むと、バスは建物を出て、ようやくフェリーのもと
へ。バスを降りたところで乗車時に貰った赤いカードを渡し、いよいよ乗船だ。

　今回のフェリーは新しくキレイで、規模も大きい。徒歩での乗船客は少なかったのだ
が、船内には多くの人が乗船していた。学校の遠足のような団体もいて、船内は賑やか
だ。船内にはデューティーフリーやゲームセンターもある。船内のカフェテリアでは「ブリ
ティッシュ・トラディショナル」と銘打った３種のメニューが用意されていた。

　　�@チキンのアスパラガスソース

　　�Aステーキとマッシュルームのパイ

　　�Bフィッシュ＆チップス　　　　　いずれもポテト＆ベジタブル＋デザート付　６．９５£

　昨夜イギリスに到着して以来、ホテルの朝食（しかもコンチネンタル）しか食べていなか
ったので、少し高いが�Aを選択。イギリスはメシがマズイと良く言われるが、決して悪くな
い。でもメニューの中で１番美味かったのは、デザートの「サマー・プリン」だった。そして
仕上げはやっぱりギネス（４．１％・５００ｍｌ缶・£１．９）。ギネスって常温で飲むものだと
思っていたのに、缶には「SERVE EXTRA COLD」とか「CHILL FOR 3HOURS」とか書か
れていた。ロシアを旅して「常温ビールも、それぞれの味が良く判って悪くない。」と思っ
ていたが、やっぱりビールは冷たい方が美味いのだ。

　時刻表での航行時間は７５分。ただこの日は、やや波が高いこともあって少し遅れてい
るようだ。カレーの町に建つ塔が見えてきたのでデッキへ上がってみる。もうフランスは
目の前なのだが、後方を見るとイギリスの陸地も見える。ドーバー海峡は最も狭い所で３
５�qと言うが、こうして見ると思ったより近く感じる。そうしてフェリーは岸壁に近づき、１５
時半に定刻から３０分遅れでカレーに到着した。

　　　　　「船内ｶﾌｪﾃﾘｱでﾗﾝﾁ。」　　　　　　　　　　　「すれ違うﾄﾞｰﾊﾞｰ行のﾌｪﾘｰ。」

　フェリーを下りると、ここでも空港にあるようなバスでターミナルへ。入国手続は特に無
く、そのままターミナルビルは素通り。ここからカレーの町までは無料のシャトルバスが
ある。本来は船の到着に接続しているようなのだが、到着が遅れたせいか次のバスまで
２０分ほど待つことになった。今日は待ち時間が多く、予想以上に時間が掛かる。

　シャトルバスで２つ目の停留所で下車すると、カレーの駅はすぐ近く。駅の切符売り場
で今日の目的地であるレンヌまでの最速経路を尋ねたところ、予想外の回答が来た。私
はてっきりココから列車に乗るつもりでいたのだが、提示されたプランはココから無料の
シャトルバスに乗って郊外の駅に行き、そこからＴＧＶに乗るというもの。しかも５分後に
バスが出ると言う。正直このルートは頭の中に無かった。急いでカレー→パリとパリ→レ
ンヌの予約を済ませ、駅前のバス停に向かった。予約はそれぞれ３ユーロ。

　文字１つ塗装されていない真っ白なバスに乗り、町の中心にあるカレーVille駅から郊
外のカレーＦｒｅｔｈｕｎ駅までは約５分。ＴＧＶ専用の郊外駅は、日本の新幹線風に言えば
「新カレー駅」と言ったところか。高架状になった構造も新幹線の駅に似ている。待ち時
間の間に翌日の夜行列車の予約を済ませてホームに上がる。時間になり現れた列車は
予想外のユーロスター。つまりこの駅はロンドンからユーロトンネルをくぐって来たユーロ
スターの軌道上にある駅だったのだ。どうやらユーロスターもフランス国内のみなら通常
のＴＧＶ同様にユーレイルパスでも乗車できるようなのだ。１等の車内に乗り込むと、既
に食事のサービスは終わっていたようだが、ちょうどコーヒータイム。途中乗車ながらコ
ーヒーは頂くことが出来た。予想外の２度目のユーロスターにチョット得した気分だ。

　昨日に続き訪れたユーロスターのノルド駅から、今夜はメトロでパリ・モンパルナス駅
へ。ここからレンヌ行のＴＧＶに乗る。今度は昨日のＴＧＶとは違い１階建ての車両。やは
りＴＧＶでの移動は途中停車駅も少なく快適だ。こうしてようやくたどり着いたレンヌの駅
に降り立つと、駅前には２ツ星・３ツ星クラスの小さなホテルがたくさん見える。ここで今
夜の宿を探さなければいけないのだが、どこの宿も満室を示す“Complet”の表示。フロ
ントで聞いてみてもダメ。駅の裏側にあるホテルや、駅から少し離れたホテルも、見事な
までに全部満室。ホテルがたくさんあるからっ楽観視してたのに・・・。しまいにはロビー
に滞在させて欲しいと交渉するも当然断られる始末。街中を２時間近く歩き回り、１９件
目の「ホテル・メルキュール・レンヌ Centre Pre-Botte」でようやく空室を発見。なんとな
く料金が高そうだったので最後まで訪ねなかったホテルだったのだが、１泊 ９３ユーロ
（税込）と許容範囲内。部屋は広くてキレイだし、この旅が始まって初めてＮＨＫの国際放
送も視聴可能。こんなことならもっと早くココに来ていればよかった・・・。