１０月５日朝６時半、ホテルの朝食は７時からなのだが一足早くチェックアウト。ミラノ中
央駅に向かう。今朝も相変わらずのドシャブリ。昨日の遅れを取り戻すべく、今日の最初
の列車はイタリアの高速列車「ＥＳスター」。この列車もリミニまでで １１ＥＵＲの追加料
金が必要。列車の出発は７時５分。駅の売店やカフェは７時にならないと開店しないらし
く、店の前には人だかりができていた。

　列車が出発すると、車内ではソフトドリンクやお菓子、新聞の無料サービスもある。外
の雨はますます激しさを増し、そのせいか列車も一時徐行運転。しかし、線路から少し
離れた所に数本の塔が見えるボローニャの街に寄った後、列車はちゃんと定刻通りでリ
ミニに到着した。この頃には何とか雨もあがったようだ。

　駅舎の建つホームの北端にあるコインロッカー（大 ３．６ＥＵＲ）に荷物を入れ駅前へ。
今日は日曜なので観光案内所もお休み。駅舎を出て右側に進むとバスのチケットブース
がある。サン・マリノまでは片道 ３．１ＥＵＲ。ここではバスの時刻表ももらえる。時刻表
によると日曜は本数が少なく、次は１２時１５分までバスが無い。仕方が無いのでその間
リミニの町を散策することにした。

　駅から真っ直ぐ伸びる道を１０分程歩くと広場に出る。ここが町の中心だろう。そこから
左に曲がって５分程行くと、大きな石の門が立っている。かつては旧市街を取り囲む城
壁でもあったのだろうか。来た道を戻り、広場にあるオープンテラスの「カフェ DOVESI」
でブランチを取る事にした。入口のメニューにはパスタも載っていたのだが、オーダーす
ると「日曜はダメ」とのこと。パンやケーキ類しか載ってない日曜用のメニューを持って来
た。この辺りにもお国柄を感じる。結局ピザ風パン（１．３ＥＵＲ）＋ホットドッグ（４ＥＵＲ）
＋ビール「PERONI」（５．０％・２５０ｍｌ瓶・２．６ＥＵＲ）をオーダー。ちょっとした菓子パン
でも、オープンサンドを焼くような機械でキチンと温めてくれるのも、イタリアでは良くある
こと。この国では何を食べても本当にウマイ。

　時刻になり、駅前からバスに乗る。町を抜けて少しだけハイウェイを走ったかと思え
ば、大きなショッピングセンターが立ち並ぶエリアに入る。周囲をよく見ると、車にはサ
ン・マリノ共和国を示す「ＲＳＭ」のステッカー。町の看板に書かれたホームページ・アドレ
スも「ドットＳＭ」。気付かぬうちにサン・マリノに入ってしまったようだ。その後バスはグン
グン坂を登ってゆく。サン・マリノの中心部はティターノ山のてっぺんにあるのだ。標高が
上がるにつれて、またもや雲行きが怪しくなってきた。そして１３時１０分、バスが到着し
た時には滝のような豪雨。山の上ということもあり、風も物凄い。

　嵐のような悪天候の中、バス停から上の道路に上がり、小さな門をくぐる。土産物屋が
並ぶ九十九折の坂道を登れば登るほど風は強くなる。ここの土産物屋にはコインを売る
店が多い。裏面が各国オリジナル・デザインとなったユーロの硬貨には、サン・マリノ独
自のデザインのものもある。流通量の少ないこれらの硬貨は ０．２ＥＵＲ硬貨が ５ＥＵＲ
で売られていた。これって本当に通貨として使用するために鋳造しているのだろうか。ど
うも高値で売るために造っているような気がしてならない。そして町の中心・リベルタ広場
を過ぎ、真っ直ぐ歩くのも困難な中、ズブ濡れになりながら観光案内所に辿り着いた。こ
こでも ２．５ＥＵＲでパスポートに入国記念スタンプを押してくれる。スタンプだけだったリ
ヒテンシュタインとは違い、ここでは２枚の証紙も貼ってくれた。サン・マリノもリヒテンシュ
タイン同様キレイな切手が有名。今回の証紙は切手ほど凝ったデザインではないが、ス
タンプだけよりは嬉しい。

　観光案内所を出てさらに坂を上ってゆく。せっかくなのでサン・マリノの頂上を目指すこ
とにした。頂上に建つのは「ロッカ・グアイタ」という砦。サン・マリノにはこの他に２つの砦
がある。サン・マリノの町は山の上にあるので景色が良いのだが、山の西側斜面に位置
しているため、アドリア海側は望むことが出来ない。ただ頂上付近まで来ると、ようやく山
の反対側＝リミニのある海側を見下ろすことが出来る。入場料 ３ＥＵＲを払って「ロッカ・
グアイタ」に入場。雨は少し弱くなったかと思えば、またすぐにドシャブリ。砦の中は４層
構造。ハシゴのような階段を上り、最上階の窓から海側の景色を見た瞬間・・・

　雨は少し小降りになり、眼下には虹。あまりに突然の出来事にただ感動。半ばヤケク
ソでここまで登ってきた疲れや寒さもいっぺんに吹き飛んでしまった。雨がヒドイせいか、
砦の中には私１人。帰りのバスの時刻ギリギリまで、しばらく虹を眺めていた。

　時刻表では１５時発の帰りのバスは、少し遅れて１５時１５分にバス停を出発。今度は
グングン坂を下り、リミニまでの道を戻ってゆく。帰りは注意深く見ていたので、国境に立
つ「イタリア」の標識を見ることが出来た。時刻表ではバスは１５時５０分にリミニ着。私
はリミニから１６時３分のミラノ行列車に乗ろうと思っていたのだが、出発時刻の遅れに
市街地での渋滞が加わり、なかなか駅に到着しない。私の隣に座っていた女性も列車の
時刻が迫っているようでソワソワしている。バスがようやく駅前に着いたのは１６時５分。
駅の方を見ると、ミラノ方向に向かってＥＳスターが出発してゆく。手許のトーマスクック
時刻表によると、私の乗るミラノ行はリミニでＥＳスターに追い越されることになってい
た。「まだ間に合う。」 急いでコインロッカーから荷物を引き上げ、列車の行き先も確認
しないで停車していた列車にギリギリで駆け込む。車内で車掌に聞くと、やはりこの列車
で正しかった。車内にはサン・マリノからのバスで隣に座っていた女性の姿もあったが、
彼女は周りの人から「ミラノ行」だと聞くと、ひどく慌てていた。大丈夫だったのだろうか。

　ここからは、まずこの列車に１時間乗ってボローニャへ行き、列車を乗り換えて今度は
フィレンツェへ。そこから再度乗り換えてピサへ向かう。途中、ボローニャ-フィレンツェ間
の列車は１等車両も大混雑。コンパートメント車両の廊下にも入れない状態で、約１時間
をデッキで過ごす。フィレンツェでは少し時間があるので今夜の夜行列車の予約。実はリ
ミニで既に予約を済ませていたのだが、時刻表を見ていたら、さらに１本遅い夜行列車
だと、明日の目的地であるモナコまで、ピサから乗換無しで行ける事が判ったのだ。ただ
し両列車とも、寝台車とクシェットは満席なので、今回は１等座席。リミニでは予約料は
掛からなかったが、今回は３ＥＵＲ。このあたりの料金体系もよく判らない。

　フィレンツェの駅ではカプチーノ（１．０５ＥＵＲ）とジェラート（ティラミス味・１．６ＥＵＲ）で
一息。私がカプチーノを好きになったのも、４年前のイタリア旅行がきっかけ。やはりイタ
リアで飲むカプチーノは安いのに美味い。またどうしてイタリアのジェラートはこんなに美
味いのだろうか。日本にもジェラテリアは多いが、この濃さを再現している所は見たこと
が無い。牛乳の違いなのだろうか。台湾の粥屋とイタリアのジェラテリアは、是非家の近
所に欲しいのだが。

　フィレンツェではあまりホームから遠ざからないようにしていたのだが、すぐ近くにあっ
た５番線から次に私が乗る４番線までが妙に離れていた。今回はギリギリにならないよう
心がけていたのに、やっぱりギリギリの乗車。

　次の目的地・ピサは前回のイタリア旅行で行くことの出来なかった町。いわずと知れた
斜塔のある町だ。しかし昨日リミニまで行けなかったことや、今日が日曜日でサン・マリノ
のバスが少なかったこともあり、ピサに着いたのは２０時３１分。すっかり暗くなってしま
ったが、とりあえず斜塔を見に行くことにする。駅のコインロッカーに荷物を入れようとし
たら故障中。その奥にある手荷物預かり所は２２時でクローズだと言う。駅から斜塔まで
は少し距離があるし、雨もまだ降っている。そこでココではコインロッカーの影に荷物を
置き、そこの柱にチェーンロックで縛っておくことにした。少し冒険だが貴重品は持ってい
くので、荷物が無くなっても、その時はその時だ。

　斜塔へは駅前からバスも出ているが、時刻表によると次のバスまで５０分。それならば
歩いていった方が早い。小雨が降る中、ひと気の無い暗い道を歩いて行く。途中のジェ
ラテリアではまたしてもジェラート（２スクープ・１．２ＥＵＲ）を買い食い。何だかんだ言っ
て、町歩きを楽しんでいる。そして駅から２５分、前方に大きなドゥオーモが見え始め、広
場の前に出ると、ライトアップされた斜塔が浮かび上がった。それほど大きな塔では無い
ことは判っていたが、予想以上に町なかにあることに少し驚く。しばらく塔の周囲を散
策。塔の中に入る入口が斜めに傾いているのを見ると、この塔がどれだけ傾いているか
が良く判る。さすがに有名な観光地だけあって、２２時近いのに数組のグループが斜塔
見物に訪れていた。

　斜塔から駅に戻る途中、１軒のレストランに立ち寄る。今夜はイタリア・最後の夜なの
で、せめて１食くらいはパスタを食べようと思ったのだ。今回の旅では各地にイタリア料
理店はあったが、やはり本場に来るまで１度も入らないようにしてきた。立ち寄った「リス
トランテ CENTORALE」は２２時半閉店。閉店間際だというのに、店員の兄ちゃんは何と
か入れてくれた。この店は割とちゃんとしたレストランで、パスタというより肉や魚料理が
メイン。スパゲティはサイド・ディッシュとして２種類あるだけだ。ただ遅い時間だし、閉店
間際。パスタだけの注文でも何となく許されるような気がした。結局 スパゲティ with トマ
トソース ＋ ミックスサラダ ＋ テーブルワイン（白・５００ｍｌ）を注文。出てきたスパゲティ
は具も少なく、一見ナポリタン風。ただ固めの麺に絡んだトマトソースはやっぱり美味
い。パンを含めてトータル １７ＥＵＲ。

　その後駅に戻り、出発時刻の２時４６分まで待合室で列車を待つ。２時を回ったところ
で駅近くの深夜営業しているカフェで濃いエスプレッソ（０．８ＥＵＲ）を一杯。これでイタリ
ア フィニッシュだ。

　　　　「ﾗｲﾄｱｯﾌﾟされたﾋﾟｻの斜塔」　　　　　　「ｲﾀﾘｱではやはりｽﾌﾟｰﾝは出てこない。」