当初の計画では、昨日のヨーロッパバスをアウクスブルクで下車し、昨夜のうちにミュ
ンヘン入り。そして朝一番でノイシュヴァンシュタイン城へ向かう予定だった。ただフラン
クフルトで気が変わってルート変更。ミュンヘンでの滞在時間を長くした。何故なら現在ミ
ュンヘンは世界最大のビール祭「オクトーバーフェスト」の真っ最中。この変更で西ヨーロ
ッパ編がユーレイルパス有効期間１５日から１日オーバーすることになる予定だが、や
はりココには時間を掛けたい。

　山あいの終着駅・フュッセンから出る列車は本数が少ない。途中の車窓は湖に始まり
牧草地帯を抜けて行く景色の素晴らしいルート。右も左も景色が良いため、どちらを見て
いれば良いのか迷ってしまう。

　列車がミュンヘンに近づくにつれて、乗客の中に、男はヒザ丈くらいの革の半ズボン、
女はローラアシュレイのようなワンピースや花柄のロングスカートといった、民族衣装に
身をまとった人が増えてきた。きっと今どき普段からこんな格好はしない。やはりこれは
オクトーバーフェスト・モードなのだろう。なんだか期待が高まってしまう。

　列車がミュンヘンに到着し、駅から近い「ホテル・エーダー」にチェックイン。フェスト期
間中でもあり難航が予想された宿探しも１発ＯＫ。部屋は狭いがリニューアル直後のよう
でキレイだ。ただ駅近くとはいえ２つ星クラスで８５ＥＵＲ（シャワー・トイレ・ＴＶ・朝食付）
は少し高い。ここでもオクトーバーフェスト・モード。

　部屋に荷物を置き、いざ出陣。ホテルのフロントで会場までの道順を聞くと、「Ｕバーン
（地下鉄）で１駅だが、ここから歩いても１０分くらい。中央駅から人の流れに付いて行け
ば判るよ。」とのアドバイス。その指示に従い中央駅まで行くと、駅に向かって左側の方
から、派手な帽子をかぶったり、ハート型のチョコレートを首から下げた人達が帰ってく
る。どうやらこっちの方向らしい。人の流れを頼りに、しばらく辺りを彷徨う。信号待ちを
していたら、民族衣装のカワイイ女の子２人組がやって来た。少しストーカーチックだが、
彼女達の後を付いて行くことにした。すると次第に人の数が増え始め、民族衣装の人々
がどんどん合流してきた。やはり彼らはココに来る人達だったのだ。

　会場に着くと、平日の１６時だというのにオトナ達で大混雑。ちゃんと民族衣装を持って
いる人がこんなに多いというのはとても素敵だ。会場のテレージエンヴィーゼ広場は普
段から遊園地になっているのか、周りには多くの遊具がある。しかし良く見るとメリーゴ
ーランドは「回るビア・カウンター」になっていて、当然ながら客は大人ばかり。なんて素
晴らしい所だ。改めてフェスト会場を進んで行く。場内にはビール会社の巨大ビアホール
が１１軒ある。ふと思うと世界的にメジャーなヨーロッパのビールといえばオランダやデン
マークのブランド。ドイツと言えばビールのイメージが強いが、この１１軒の中でも聞いた
ことがあるのはレーベンブロイくらい。ドイツは地ビールの国ということなのだろう。

　さっそく１軒目「Fischer-Vroni」のビアホールに入る。中は物凄い熱気。いったいこの
中に何百人の人がいるのか想像できないくらいの混雑ぶりだ。私は昨日一日アルコー
ルを控えて万全の体勢なのだが、どうも勝手が判らない。スタッフに聞くと、とりあえず席
に座ってからでないと注文できないらしい。しかし肝心の席が満席なのだ。ホール内を探
し回り、ようやく屋外のエリアに空席を発見。座ってウェイターにジョッキを注文。念願の
１杯目、１リットル ６．８ＥＵＲだ。間髪入れず２軒目「Hippodrom」へ。ここではホール中
央でバンド演奏をやっており、さらなる盛り上がり。システムはどこも同じで、例によって
ここも空席がない。またしても、やっとの思いで２階の席を確保。ここのジョッキは店頭表
示 ６．７ＥＵＲだったが、ウェイターの兄ちゃんは ７ＥＵＲだと言う。まぁチップだと思って
ようやく２杯目。続いて「Armbrust-Schutzen」 ジョッキ１杯 ６．７５ＥＵＲと進んでゆく
が、どこに行ってもジョッキは１リットル入で ７ＥＵＲ弱。これでは体も財布も持たない。こ
の時点で、来場時に打ち立てた１１軒制覇の野望は早くも断念・・・。

　一旦ホテルに戻り、しばし休憩の後、夜の部スタート。ビアホールはどこもライトアッ
プ。暗くなってからの会場はますますヒートアップ。ホールからジョッキを持ち出し、屋外
を歩きながら飲んでいる人も増えてきた。夜の部最初は夕方入場制限で入れなかった
「Augustinerbrau」 １杯 ６．６５ＥＵＲ。ホールの中ではもちろん食事もできるのだが、料
理はどれも物凄いボリューム。しかもほとんどが １０ＥＵＲ以上。大勢で盛り上がれる大
皿料理が主体。私のような１人旅の身には、ビアホールに挟まれた通りに並ぶ出店がち
ょうど良い。ここならパンに挟まれたソーセージやサーモンが ３ＥＵＲ前後で購入でき
る。また出店にはＴシャツや帽子などの土産物屋も多い。普段観光地に行ってもＴシャツ
など買わない私も、ついついＴシャツと帽子を買ってしまった。回りの大人達も、牛のデ
ザインの帽子や、青×白のレーベンブロイ・カラーの大きな帽子をかぶって歩いている。
酒を飲ませて気が大きくなった客に物を売る。案外いい商売かもしれない。そして今夜
の最後はレーベンブロイ。ここも少し前まで入場制限をしていたが、２２時を回り制限も
解けたようだ。ここの１リットル・ジョッキは ６．８ＥＵＲ。今日は久々に散財を尽くした。

　　「予約席では料理の準備中。　　　　　　　　　　「ｼﾞｮｯｷはどこも、ﾘｯﾀｰ･ｻｲｽﾞ。

　　　　　ここは収穫を祝う祭なのだ。」　　　　　　　　　　　　　　もう飲めませ〜ん！」

　ふと会場を見回すと、ほとんど子供の姿が見えない。ビールの祭だから当たり前だが、
これほど大規模で陽気な大人向け祭典も珍しい。この賑わいが１６日間も続くのだから
物凄い経済効果だろう。昔から良く、美味いビールの産地は「札幌・ミュンヘン・ミルウォ
ーキー」と言うのを耳にする。日本のビールメーカーもタッグを組み、札幌でこういった祭
をやってみてはいかがだろうか。（国内ビール５社参加なら、会場は夏の沖縄か？）

　あれっ、ミュンヘンに来てから結局ココ以外どこも見てないぞ。