キプロスへのフライトにはキプロス航空（ＣＹ）を利用することにした。アテネの空港でＣ
Ｙのカウンターを訪ねたところ、キプロスへは帰国便のチケットを持っていないと入国許
可が下りないと言う。しかたなく往復チケット ２９８．０５ユーロをカードで購入。（ちなみ
に片道 １９０ユーロ。）大きな出費だが仕方あるまい。ところが今度は、次の１２時の便
も、その次の１４時の便も満席だと言ってきた。９月１日から９日までの間キプロスでは
ワインフェスティバルが開催されており、その影響かもしれない。とりあえずキャンセル待
ちを依頼すると、１１時半に再度カウンターまで来るように指示を受ける。それまでの間
は空港ビル内をブラついてみる。空港周辺から出土した土器等が展示されたコーナーが
あるのもギリシャらしい。一方で来年に控えたアテネ・オリンピックのオフィシャルショップ
もあり、一足早くオリンピック・モードだ。１１時半になりＣＹのカウンターに戻ると、約１０
名のキャンセル待ちの客がいた。どういう手順なのか判らないが、一人発券しては何処
かに確認をし、また一人発券しては確認といった感じ。なんともヤキモキさせられる。よう
やく７番目くらいで私の搭乗券が発券され、無事１２時１５分の便に乗ることが出来た。

　機内に乗り込むと、シートはエコノミーも革張り。前方のテーブル以外にも肘掛からドリ
ンク用の小さなテーブルがスライドして取り出せる等、なかなか設備が良い。短時間フラ
イトなので機内食も軽食だが味はイイ。前方スクリーンではトム＆ジェリーのアニメを上
映していた。アテネを離陸後３０分ほどでロドス島上空を通過。１晩かけてフェリーでやっ
て来たのに、さすが飛行機だと速い。しばらくしてキプロスのラルナカ空港に着陸する
と、機内では拍手喝采が巻き起こった。

　入国審査ではやはり全ての人が帰りの航空券の提示を求められていた。比較的距離
が近いせいか、ロシア人観光客が多い。また中国人の姿も結構見られた。入国を果た
すと、まずはＡＴＭで通貨の引出。キプロスの通貨はキプロス・ポンド（以下Ｃ£と表記）。
数日前まで滞在していたトルコとは逆に、たった１Ｃ£で約２３０円に相当するのだから、
つい無駄遣いしてしまいそうだ。またキプロスでは土曜の午後と日曜終日は、公共交通
機関であるバスが運行しない。ノンビリした国だ。今日は日曜日。本当は首都・レフコシ
アまで行きたかったのだが、約５０kmもタクシーで行く訳にもいかない。今日は空港のあ
るラルナカの街にステイすることにしよう。空港からラルナカ市街まではタクシーで約１０
分。ビーチのすぐ前にあるホテル「レ・パルミエ」にチェックイン。エアコン・シャワー・トイ
レ付で２１．５Ｃ£。ベランダから横を見ればビーチも見えるが、窓側の道幅が狭く、向か
いの建物から部屋が丸見えなのが難点。その他は特に申し分ない。

　少し休んでから町歩きをスタート。ところがこの町は交通機関だけでなく、多くの商店も
土曜の午後と日曜終日は休み。今になって思うと、もしロドスを１泊だけで出てきていた
ら、土曜の午後にキプロスに着くという最悪の状態になっていたところだ。危ない危な
い。結局観光客相手に町が機能しているビーチ沿いの商店でビール・KEO（４．７％・３３
０ｍｌ・０．８Ｃ£）を購入。ビーチでノンビリすることにした。なお、このキプロスの国民的
ビールのテレビＣＭも和風テイスト。座敷で待つ西洋人に和服を着た東洋人女性が膳を
運ぶ。料理を西洋人達の前に置いた瞬間、女性は着物の裾を勢いよくまくりあげ、太も
もに挟んだＫＥＯの瓶３本の栓を物凄いスピードで抜くという内容。またしても怪しい。

　夕方になり、町外れの聖ラザロ教会を訪ねる。教会内は見事な装飾なのだが、ちょう
ど礼拝の時間。そのあまりに荘厳な雰囲気に圧倒されて、すぐに出てきてしまった。そし
て夕食は昼間の町歩きで見つけたアートカフェ１９００へ。ロドスのカフェといい、どうも私
はこういう類の店に惹かれてしまうようだ。中に入ると１階のカフェ部分には誰もおらず、
絵が沢山飾られた２階のレストランに上がる。道路にせり出した小さなベランダ席に腰掛
けると、初老の男性がメニューを持ってやって来た。「今日キプロスに来たばかりなの
で、何かキプロスらしい物を。」と尋ねると、「ちょっと待って。」と言い、今度は中から“若
おかみ”風の女性が出てきた。娘だろうか。どうやらこの店は２人でやっているようだ。彼
女は「ここはツーリスト向けの店じゃないから、みんなキプロスの家庭料理よ。」と言って
メニューの１つ１つを説明してくれる。注文したTtavas（４Ｃ£）は煮込んだ豚肉と野菜を
チリビーンズ風に味付けしたもの。自慢のハウスワイン（白・小デカンタ・３．５Ｃ£）も香
り高く美味い。一人ならグラス５杯分くらい。ベランダの心地良い風に吹かれながら食事
を楽しんでいると、最初の初老の男が「お味はいかがですか。」と様子を伺いに来る。
「ベリー・グッド！」とサムズ・アップ。それにしても周囲を見渡すと、この町にはベランダ
のある部屋が多く、またその多くで人々は食事をしたり、くつろいだりしている。表通りか
ら１本入った路地は、すごくイイ雰囲気だ。食後にはエスプレッソのような小さなカップに
入った濃いサイプロス・コーヒー（０．７Ｃ£）を注文。結局以上３品に最初に頼んだガー
リックトースト（１Ｃ£）＋チップで合計１０Ｃ£。物価の安くないキプロスでは少し贅沢した
が、今夜はとてもいい気分。これだけでもキプロスに来た甲斐があったというものだ。

　キプロスといえば数多くの料理をセットにして出す「メゼ」が有名だが、メゼはたいてい
の場合２名以上から。私のような一人旅にはココのような店がちょうどよい。幸か不幸か
店内にあまり客がいなかったため店内も静か。もし今後ラルナカの町を訪れる方がいら
っしゃったら、是非この店を訪ねてもらいたい。

　　 「いち押し！ｱｰﾄｶﾌｪ1900の店内」　　　　　　「キプロスの国民的ビール・ＫＥＯ」