ここで問題が起きた。やはりロドス島からキプロスまでの航路は出ていなかったのだ。
本来アテネからロドスとキプロスを経由してイスラエルのハイファまで行く航路が週に1便 あるのだが、現在運休しているという事は日本でも判っていた。ただ「現地に行けば何ら かの手段があるのでは・・・」という淡い期待を抱いてここまで来たのである。港の前の旅 行会社によると、「現在キプロスへ行くには飛行機で行くしかない。ロドスからの直行便 は9月9日まで無い。」との回答。これも事前の調査の通り。いずれにせよ今日はここに 泊まって、今後のプランを検討することにしよう。
宿探しを始める前にまずはユーロの調達。ユーロの現金が市場に流通して以来、初め
てのヨーロッパ訪問だ。ロドスにも24時間のATMが街じゅうにあり、港の前のATMで1 00ユーロを引き出した。
船が着いたコマーシャル・ハーバーのすぐ前がロドスの旧市街。ぐるりと城壁に囲まれ
た旧市街は昔ながらの街並が残っており、世界遺産にも登録されている。港から一番近 いポート門をくぐって旧市街に入ると、スクーターに乗った1人の男性が「部屋は決まって るのか?」と声を掛けてきた。普段ならこういう輩は相手にしないのだが、ロドスに関して は特にプランを用意していなかったので、とりあえず部屋を見せてもらうことにした。彼の 経営する「NASSOS PENSION」は安宿街の少し手前にあり、港から10分足らず。奥に はドミトリーもあるようだが、彼は2つの部屋を見せてくれた。1つ目は1階の10畳くらい の広い部屋で、TV・エアコン・キッチン付・1泊45ユーロ。2つ目は2階のTV付ツインル ームで30ユーロ(いずれもシャワー・トイレ共同)。2階の部屋からは旧市街の建物越し に海が見え、海からの風も気持ちいい。旧市街の建物なので建物自体は古く、石造りの 壁から剥がれた小石が多少散らかっているものの、そんなに汚くはない。今夜はこの2 階の部屋に泊まることにした。
ここまで連れてきてくれた主人が「コーヒー・紅茶、どちらが良いか?」と聞くので、紅茶
と答える。ところがすぐにキッチンから戻ってきて、「紅茶は切らしてたからコーヒーで良 いか?」と返してきた。特に問題はない。そのコーヒーを飲みながら宿帳に記入をする。 ローマ字で記入しようとしたら、「日本語で書け。」と言ってきた。様々な国の人が訪れる ロドスだ。おそらくいつも自国の文字で書かせているのだろう。何ともシャレてるではない か。そのまま主人と少しおしゃべり。やはり今日は風が強いらしい。マルマリスからの船 は午前便は概して穏やかなのだが、午後便は揺れることがあるそうだ。
ひと息ついたら、さっそく旧市街を散策。以前訪れたイエメン・サナアの旧市街に比べ
ると小さく判りやすい。またヨーロピアン・リゾートらしく、いろんなショップやカフェ、レスト ランも多く、旧市街の街並にしては洗練された印象だ。結局22時近くまで歩き続け、そ れから夕食。今夜は船酔いの不快さが残っているので、宿の近くのレストランでサラダ+ ビールだけに留めておく。ビールはギリシアの Mythos (5%・500ml) 3ユーロだ。
9月5日朝5時半、外が薄っすら明るくなり始めた。部屋の目の前には古く小さな教会
「HOLY TRINITY」があり、赤瓦のドームが徐々に陽に照らされていく。今日も風が気持 ちいい。結局いろいろと考えて、一旦ここからアテネへ行き、そこから飛行機でキプロス に向かうことにした。ロドスからアテネへは毎日船が出ており、さっそく今日にでも出発し ようと思い、その旨を宿の主人に告げた。そうすると彼は少し怒った口調で、「どうしてそ んなにスグに行くのだ。ロドスは良い所だから、もっと居ればよい。」と言い出した。また 彼は、「今日は波が高くて船は出ない。どうせ明日以降になるのなら、9日までココに泊 まって、飛行機で行けば良いではないか。」とも言う。もちろん商売のためのアドバイスで もあり、また「ロドスが好きだからこそ永く滞在して欲しい。」という熱意にも聞こえる。(昨 日港の入国審査の時にも、「何日間ギリシアに滞在するのか」を聞かれ、テキトーに「3 日」と答えたら、入国審査官は怒った顔になり、「わざわざ日本から来て、どうして3日し か居ないのだ。ギリシアは良いところで見所も多いから10日は居なさい。」と言われたこ ともあった。)とりあえず私は港の船会社へ行くことにした。聞いてみると、やはり今日は 船が出ないと言う。運賃はアテネのピレウス港まで26ユーロ。「天候の事なので、明日 の朝また来なさい。」と言われ、一旦宿に戻る。いずれにしても今夜もここで1泊だ。
宿の主人の言うことも間違いではない。実際ココの宿泊費は1泊30ユーロ。9日まで
滞在するなら、あと3泊で90ユーロだ。一方アテネ経由にした場合、船賃26ユーロ+航 空運賃もアテネ-キプロス便はロドス発に比べて30〜40ユーロは高い。費用的には宿 1泊分くらいしか変わらない。ただ@明日船が出れば、7日(日曜)にはキプロスに着け る。Aキプロスの次に私は中東へ向かうつもりなのだが、このスケジュールで順調にい けば、“イスラエルでは交通機関も含めて機能が停止してしまう”安息日の金曜日になる 前にイスラエルを通過できる。B何より今回の旅ではできるだけ飛行機は使いたくないと 考えている。今後中東を回った後、再度アテネへ戻り、ここから「ヨーロッパ・鉄道の旅」 を始める予定なので、アテネまで船で行けば、海路→陸路の輪がつながる形に出来る。 (アテネからキプロスや中東を回るのは、いわば“オプショナルツアー”という自分への言 い訳。) といった理由から、やはり一旦アテネへ行くことに決めた。明日悪天候で船が 出なかったら、その時また考えよう。
昼からは市内散策。旧市街には古い建物の廃墟も多く、見ていると不思議な気持ちに
なる。複雑な旧市街の位置関係もだいぶ把握できてきた。そのまま歩いて今度はエレフ テリアス門から新市街へ。門を出たすぐ前のトルコ式市場周辺は割りと賑わっている が、新市街の中心部はそれほどでもない。やはり観光の中心は旧市街なのだろう。トル コ式市場の店をふと覗くと、日本のヒーロー戦隊シリーズの人形が売られていた。かつて これらの戦隊モノを海外向けに再編集(変身前のストーリー部分は外人による新録。戦 闘部分は日本のものを流用。)した「パワーレンジャー」がアメリカを中心にヒットしたこと があったが、ここで売られていたのは現在日本でも放送中の「爆竜戦隊アバレンジャー」 改め「POWER RANGERS ABA FORCE」。今でも海外で放送されているのだろうか?
トルコ式市場の前はマリーナになっており、海からの入口の両脇には、小さな鹿の銅
像が乗ったポールが立っている。鹿はロドスのシンボルらしく、マンホールの蓋にも鹿が 描かれていた。散策の途中、ピザスタンドでピザを頬張る。15cm四方位で1.8ユーロ+ ビール AMSTEL(5%・330ml缶) 1ユーロ。パリパリでスパイシーなピザの味は、地中 海地方に来たことを感じさせてくれる。夕方になり今度は旧市街・セントアタナシウス門 から西へ約20分歩いたところにある古代遺跡へ行ってみる。ここには古代のスタジアム や劇場、そして柱が4本だけ残るアポロン神殿が建つ。ここではギリシアに来たことを実 感。ものすごい強風の中、西の海に太陽が沈むまで、ずっと神殿を眺めていた。太陽が 雲に邪魔されることなく、完全に丸いまま沈んでゆくのを見たのは何年振りだろうか。そ して今夜は散策途中で気になった宿の近くの「アートギャラリーカフェANAKATA」で夕 食。今夜のビールも昨夜と同じ Mythos (5%・330ml・2.7ユーロ)だ。
「ファンタ・マッドネス(500ml・1ユーロ)はスイカ味。 「夕日に浮かぶアポロン神殿のシルエット。」
でもスイカジュースは炭酸じゃないほうが好み。」
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