新潟-ウラジオストク線を運航するのはウラジオストク航空（XF）。かつての国営航空・
アエロフロートから分社化した組織らしい。出国手続するロシア人を見ていると、軒並み
手荷物検査に引っかかっている。「日産純正ラジエーター」と書かれた大きなダンボール
を持って帰る兄ちゃんもいる。わざわざ買いに来たのか？

　今度の搭乗機はツポレフTU１５４。１６０人くらい乗れる旧ソ連製のジェット機だ。今回
はやむを得ずビジネスクラスなのだが、この路線は少し前までエコノミーのみのモノクラ
スだった。乗ってみて驚いたことに、シートはエコノミーと同じだ。ただ�@３人掛けのシート
の中間の席をクッションではめ殺し、大型の肘掛とする。�Aエコノミー時の先頭から３列
分のスペースに２列しか配置しないことでシート間の足下スペースを確保。（ただし頭上
の読書灯・通風孔はかつてのピッチのままで３列分ある）、といったような手が加えられ
ている。音楽・映画のサービスは当然ない。ただ、８席（今日は７名搭乗）のみのビジネ
スを担当するリーダー格の乗務員は愛想も良く、１時間半のフライトで、離陸前のウェル
カムドリンクに始まり、食前酒→機内食とサービスは引っ切り無し。機内食の味も悪くな
い。私がガンガン酒を飲んでいたので、乗務員もどんどん勧めてくれる。量の多い機内
食を食べ終える頃には着陸態勢に入っていた。またビジネスクラスなら新潟空港でラウ
ンジは使えるし、たまたま今回荷物が２０�sを超えてしまったが追加料金は無し。さらに
着陸後、飛行機からターミナルビルまでは専用バスで真っ先に通され、まだ誰もいない
入国審査もほとんどノーチェック。預けた手荷物もエコノミーとは別に最初に出てきて、
飛行機を降りて５分もしないうちに入国できてしまった。エコノミーの入国審査はまだ始ま
ったばかりの頃だろう。これならプラス１万円の価値はあるかもしれない。（欠点があって
も「まぁロシアだから」で許せてしまうのも不思議。私の前の席のロシア人は搭乗してすぐ
に携帯電話で話し始め、離陸後しばらくの間　通話したまま。何でもアリだ。）

　この時点で現地時間は２０時だが、新潟より西にあるのに時差は＋２時間（サマータイ
ム時）なので当然まだ明るく、ようやく陽が傾き始めた頃だ。入国ゲートを出るとホテルま
でのトランスファーの兄ちゃんが待っていた。空港から市街までは車で１時間。ロシア旅
行には欠かせないバウチャー（日本の旅行会社が発行した「代金支払済」を示す引換証
のようなもの。日本でビザ申請する時点でコレが必要。今回は使用順に５枚ある。）と引
き換えに、シベリア鉄道のチケットをもらう。途中で両替屋に立ち寄ってからホテルに到
着。この日の宿はホテル・ウラジオストク。０階（日本で言う１階）にはカジノもある。私の
泊まる４階は、チェックインも朝食も全て４階で行える、いわゆるエグゼクティブフロアと
いった感じ。エレベーターホールには“ヂェジュールナヤ”と呼ばれる女性従業員が２４
時間待機していて安心。部屋も広くはないが綺麗だ。今日は初日なので、チェックイン後
は近くを散策する程度にする。２４時間オープンの店も幾つかあり、ビールやジュースを
購入。ロシア産ビールの銘柄も豊富で５００ml瓶が１４ルーブル（以降 Pと表示）＝約５６
円 くらいからあるが、外国産は ３０P〜、アサヒ・スーパードライは３５０ml缶が ６１Pで
売られていた。

　　　「ﾛｼｱﾝﾋﾞｰﾙは常温で飲む場合が多い。「銀の小判状の物がﾎﾃﾙのﾙｰﾑｷｰ

　　　　　　　味はｸｾが無く飲みやすい。」　　　　　　　　　　こんなので大丈夫か？」

　８月１５日、午前中はホテルでのんびり。ホテルの浴室はお湯も豊富に出るしドライヤ
ーもあるのだが、トイレと浴槽のみで何故か洗面台が無いので、浴槽の蛇口で歯を磨
く。遅い朝食の後、昼から市内散策に出かける。街には中国や韓国などアジア系の団体
旅行者が目立つ。ウラジオストクは坂の多い港町。ホテルからまっすぐ坂を下りるとシベ
リア鉄道の終点・ウラジオストク駅。その向こう側には、日本からの船も着くウラジオスト
ク港がある。駅前は賑わっていて、いろいろな露店が出ている。その中の１軒で量り売り
のアイスを買う。１００g＝ １３Pで、ちょうど小さいコーン１つ分くらいだ。いくつかの種類
の中からアプリコット味をチョイス。まぁウマイ。駅正面のレーニン像の隣にあるピラミッ
ド型の建物にも食料品などを扱う店がいくつかあり、ここも混雑していた。

　ロシアの道路は右側通行なのだが、走っている車のほとんどが日本から来た右ハンド
ル車。日本国内専用車種も多く、ここはおそらく最も日本車の車種が豊富な外国だろう。
日本国内で使用していた企業名がそのまま書かれた車も“お約束”。

　今度は駅前から路面電車に沿って歩いてゆく。ヨーロッパ風の町並がイイ感じだ。ひと
際高い州政府庁舎の先を右へ。革命戦士広場には本や文具を扱う露店が多く出てい
た。そのまま市内一番の目抜き通りであるスヴェトランスカヤ通りを「旧国営百貨店グ
ム」を冷やかしつつ進み、再度右折し海に出る。本物の潜水艦を利用した博物館がある
など、この界隈は第二次大戦を慰霊する公園になっている。モスクワでは結婚式を挙げ
たカップルは、まず大戦戦没者を祭る「無名戦士の墓」に報告をするという。ここでも数
多くの“タキシードにウェディングドレス姿のカップル”が記念撮影をしていた。

　スヴェトランスカヤ通りを来た方向に戻り、そのままひたすら真っ直ぐ進むとビーチに
出る。この日は涼しい曇り空なのに、多くの老若男女が海水浴を楽しんでいる。アムー
ル湾の水は意外とキレイだ。ここにもウェディング姿のカップルがチラホラ。今日は日柄
が良いのか？いずれにせよ、そのままの格好で街に出ているのは素敵だ。

　ビーチの近くの映画館を覗くと、まだ日本では公開前の「トゥームレイダー２」（９月２０
日　日本公開）が上映されている。料金は観る時間によって異なり、朝１０時は ３０P、昼
なら ５０P、２０〜２１時は １１０Pで、最終２３時は ８０P。日本以上に自由経済的な料金
設定だ。

　さて明日から１週間は“列車の旅”になるので、今夜はキチンと食事をしておこう。ホテ
ル近くのカフェ・サクラ （САКУРА）で、サラダとガルブツイ（ロールキャベツ）を食べ
る。店内は赤を基調に、壁面には桜の樹の絵が描かれている。茹でたニンジンとキノコ
のサラダは味付けも良く、ガルブツイもしつこ過ぎず美味い。これにビール「ТРИ　М
ЕДВЕДЯ（三匹の熊）」を加えて １９０P（約７６０円）だ。店内のTVではtATuのライ
ブMTVをやっていた。ロシアという先入観からか、あちこちでtATu（特に短髪でわがまま
そうな方）に似た女の子を目にするような気がする。

　食後ホテルに戻り、ヂェジュールナヤにロシア語でルームナンバーを告げると、ちゃん
と通じたようで、自室の鍵が出てくる。少し嬉しい。

　　　　　　　　　　　　　　　　積まれている。」

　８月１６日、１２時にホテルをチェックアウト後、まずは市内の銀行で１０ USDだけ追加
両替。昨日の民間両替所より若干レートが良い。ウラジオストクでは米ドル・ユーロ・日
本円のレートを提示してある所が多く、両替時はパスポートを提示して自分の名前の入
ったレシートを受け取る。再両替や出国の際に必要らしい。なお今回は日本で円からド
ルに両替して持参したが、直接ここで円からルーブルへ両替したらどうなるか？

　例えば米ドル経由　10,000 JPY → 82 USD(@121.5) → 2,439.5 P(@29.75)

　　　　　ダイレクト　　10,000 JPY　　→　　2,431 P(@0.2431)

さほど違いはないが２度両替してもドル経由のほうがレートが良かった。

　まだ時間があるので、今度は“見よう見真似”で路面電車に乗ってみる。ここの路面電
車は前方にしか運転台が無く、終点の先でループ状の軌道をUターンしてくる。運転手の
多くは女性だ。やって来た４番の電車はワンマンで、乗客はとりあえず何もせずに座って
いる。どうやら下車時に運転手へ何か渡しているようだ。１５分位走り、適当な所で下
車。５P硬貨を差し出すと、チケットと３Pが戻ってきた。運賃は２P（約８円！）らしい。

　下車した停留所の前はかなり大きな市場。市の中心からほんの僅かな距離だがアジ
ア系の観光客はいない。現地の人はカメラを向けると手を振ってくる。陽気だ。市場には
食料品・衣類・日用品と何でも揃っている。土の付いたままの野菜はツヤも良く美味そう
だ。チーズ売り場で売られていた「肌色でドロドロした飲み物」を試してみる。酸味があ
り、チーズとヨーグルトの中間のような味。味は悪くないが、これから１週間の列車の旅
を控え、こんなものを飲んで大丈夫か？

　市場からの帰りは２両編成の電車が来た。車掌が車両間を行き来している。２P差し出
すと、３P請求された。いずれにしても安い。一旦ホテルに戻り、預けておいた荷物をピッ
クアップして、いよいよシベリア鉄道の待つウラジオストク駅へ向かうことにした。

　ウラジオストクは新潟から僅か１時間半でヨーロッパの街並を楽しめる街だ。夏でも比
較的涼しく心地よい。見所は少なくブランドショッピングも無いが、のんびり過ごすには悪
くない。「手配の煩雑さ」や「価格の割高さ」が解消されれば日本からの旅行もブレイクす
るのではないだろうか。今は関空からの便もある。是非お勧めである。

　　　　「路面電車は古い車両が多い。」　　　　　「美しいヨーロッパ風の街並み」