現在日本時間で１１月２１日１１時３０分、成田へ向かう機内でノートパソコンを開いて
いる。オークランドを離陸して５時間半。前方スクリーンによると、さっきまで窓の下に見
えていたパプア・ニューギニアを過ぎ、ちょうど赤道を越えるあたり。出発してから食事と
映画「トゥームレイダー２」「ジョニー・イングリッシュ」（もちろんいずれも日本語吹替有
り。）が終わったところだ。

　「地球に生まれた者として、本当に地球が丸いということを実感したい。」　そんな素朴
な発想が出発点となって始まった今回の旅だが、私の人生の中で、こんなに長い期間に
渡って旅を続けた事は今まで無かった。再度あるかどうかも定かではない。あまり難しい
事は考えずに旅を続けてきたが、この旅を通して思った事は、まずは月並みだが『やは
り百聞は一見にしかず』という事。モスクワのページでも述べたようにロシアはその最た
るもので、私が勝手に抱いていたイメージと現実の間には大きな隔たりがあった。やっ
ぱり実際に自分の目で見てみないと判断できない事は多い。テレビやインターネットでど
んなに情報は手に入っても、やはり現実の説得力には敵わない。そんな事を改めて再確
認させてくれた旅だったと思う。

　また、自分自身が日本人として生まれた事を有り難く思う事も多かった。ロシアでも南
米でもアチコチで言われたのだが、「私のように自由気ままに世界を旅したい」と思って
も、そんな事は絶対に実現できない人々が世界中には大勢いる。一方で日本人には学
生時代から海外旅行を経験できる人も多い。貧しくはないが決して金持ちでもない“ごく
一般的な日本人”である私でも、今回のような旅に出る事が出来た。人は自分が生まれ
てくる場所を選べない。もちろん日本以外の国に生まれたとしたら、日本人には得られな
いモノを得る事が出来るだろう。だから他の国の人々を可哀想だとは思わない。ただ自
分が日本人として生まれてきた事に素直に感謝したい。それに世界中の何処に行っても
日本人を受け入れてくれる環境が（良くも悪くも）出来ていたと思う。これは過去に世界
中を旅してきた先人達のおかげだ。そうした先輩達にも感謝。またあまり関係無いが、
長期間に渡って様々な人種の人たちの中で過ごしていると、黒目・黒髪を日本人のアイ
デンティティだと誇れるようにも思えてきた。

　その後、映画「ミニミニ大作戦」に続き、２度目の機内食。食後にはデザートとしてカッ
プ入りのアイスクリームも配られる。これはチョット珍しい。機内には流暢な日本語を話
すニュージーランド人（？）の客室乗務員もいる。マジメに職務をこなす彼女達に比べ、
仕事もサボり気味な“ビビアン・スー似”の若い乗務員に『外国人らしさ』を感じてしまうの
は何故だろうか？

　ふとここまでの旅を振り返ると、大きなトラブルもなく、驚くほど順調に旅を進める事が
出来た。日本から予約を済ませていったのは最初の２週間分だけ。それ以降は全く“予
約無し”の旅だったのだが、ほぼ出発前に練っていた構想どおりにココまでやって来れ
た。それだけの事前情報が、インターネットや書籍によって日本にいながら手に入るの
だ。なんだか地球が小さくなってしまったような気がする。ただ、それでもやはりココまで
自分一人でやってきた達成感はある。その一方で、ココまでやって来れたのは、様々な
国で出会った周囲の人々のお陰である事も紛れもない事実。「自分一人による達成感」
と「周囲の人々の協力」といった、いわば背反する２つが絶妙なバランスで並存し、今回
の旅は成り立っていたのだ。少し大げさだが人生というモノも、その２つの絶妙なバラン
スの上に成り立っているのだと思う。今後の私の人生も、自分自身の力で切り開いて行
きながらも、「周囲の人々の力がなければやっていけないのだ。」という気持ちを常に忘
れないようにしていきたいと強く思うのであった。

　そんな事を考えているうちに、窓の外に房総半島が見えてきた。これにて９９日間・・・
いや待てよ。私が日本を出国したのは８月１４日で、今日は１１月２１日。カレンダーを指
折り数えると、今日でちょうど１００日目。そう、私は東から西へ向かって地球を一周した
ので、今日が９８回の夜を越えた９９日目であるにも関わらず、１００日間が経過したこと
になっているのだ。な〜んて古典的名画『８０日間世界一周』のオチを逆でいくオチで、こ
の旅行記は“お開き”とさせて頂きたい。